Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
モルガンお雪
一
まあ!
この碧い海水の中へ浸ったら体も、碧く解けてしまやあしないだろうか――
お雪は、ぞっとするほど碧く澄んだ天地の中に、呆やりとしてしまった。皮膚にまで碧緑さが滲みこんでくるように、全く、此処の海は、岸に近づいても藍色だ。空は、それにもまして碧藍く、雲の色までが天を透かして碧い。
「まあ、何もかも、光るようね。」
「碧玉のふちべというのだよ。」
と、夫のジョージ・ディ・モルガンは説明した。
お雪は、碧い光りの中に呆やりしてばかりいられなかった。
白堊の家はつらなり、大理石はいみじき光りに、琅のように輝いている。その前通りの岸には、椰子の樹の並木が茂り、山吹のような、金雀児のようなミモザが、黄金色の花を一ぱいにつけている。
岸の、弓形の、その椰子の並木路を、二頭立の馬車や、一頭立の洒な軽い馬車が、しっきりなしに通っている。めずらしい自動車も通る。
「ニースって、竜宮のようなところね。」
お雪は、岸から覗く海の底に、深い深いところでも、藻のゆれているのが、青さを透して碧く見えるのを、ひき入れられるように見ていた。足許の砂にも、小砂利にも、南豆玉の青いのか、色硝子の欠けらの緑色のが零れているように、光っているものが交っている。