Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
お鹿さんは江戸の気性とスタイルを持った京女――これは誰でも好くわけだ。前代の近衛公爵のお部屋さまになる女だったが公爵に死なれてしまった。筆者が知っている女では、これも、先代か先々代かの、尾張の殿様をまるめた愛妾、お家騒動まで起しかけた、柳橋の芸者尾張屋新吉と似ている。私が新吉を知ったのは、愛妾をやめたあとだから、幾分ヤケで荒んでいたが、当代の市川猿之助の顔を優しくして、背を高くしたらどこか似てくるものがある女だった。
「おしかさんは、支那の丁汝昌が、こちらにお出になったころ、とても思われていたのですよ。」
と、ある時、紅葉館で、一番古参だったおやすさんという老女が、わたしにしみじみ話してくれたことがある。
「おしかさんの傍をお離れにならないで、それはお可哀そうだったの。」
それでも、おしかさんは、みんなが別格にあしらっていたほど、近衛さんの思いものだったから、丁汝昌は清国へかえってからも、纏綿の情を認めてよこしたといった。
日清戦争がはじまってからも、水師提督はおしかさんを忘れなかったのだということを、お安さんは知っていたという。だが、二十八年二月、日本海軍が威海衛を占領した時に、丁汝昌は従容と自殺してしまったのだ。