Japanische Klassiker mit Furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme
「僕は自分の妻を、公衆に見せるのは嫌だな。」
と泡鳴は反対した。それには、うんといわなかった清子も、稽古を見にいってくると、すっかり厭になって断ってしまった。
*
いよいよ泡鳴が大阪へ出立する二日前の、三月廿六日の日記には、
――私の心は黒い夜の森のような、重い空気につつまれている――
と清子は書いている。二人で饑えても離れて心配するよりいいというような泡鳴からの手紙を読むと、想思の人が東西を離れるようになるとは、ほんとに憂世ではあるといい、苦労をともにする人は、呼べど答えぬ百余里の彼方の難波の宿にいるといい、すこしばかりの金を手にすると、この金を旅費にして、大阪にゆこうかしら、会いたいのは私ばかりでもあるまいからと、一緒にいれば、争闘つづける泡鳴を恋い慕った。蛙の声が気のせいか、オオサカオオサカときこえるともいうようになっていた。
君帰り物語りすと見しは夢、ふとうたたねの春宵の夢
君住むは西方百里飛鳥の、翼うらやみ大空を見る
と、だらしがないほど彼女は恋しさを告白するようになった。
とうとう、婆やを連れて、大阪へ、家財道具そっくり持ってゆく日が来た。