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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

誰も彼もみなあなたのような気持ちになりたければこそ、騒いでるんでしょう。今パリがそうだ。」

「そうかしら。」

千鶴子は思いがけないことを云われたように微笑しながら、梢の間に動く早い断雲に眼を向けた。自転車に乗って来た子供の太股の白さに日光が射していて、微風に蔓草の揺れる間を、切れるようなズボンの折目の正しい紳士が一人静かに歩いて来た。

「でも、あたし、実は何も考えることがないんですのよ。何かしら、高いお山の上に立って遠い所を見てるようよ。」

「ふむふむ。」と矢代もただ軽く頷くだけだった。見るだけ見ておけば良いときに、他人の欠点や美点をあげつらう気力は今の彼にはもうなかった。

後ろの方の小説の音読をしてやっている老婆の傍で、黙って聞いていた他の老婆が、小説の進むにつれときどき驚きの声を上げた。細い山査子の花が、畝の厚い縮緬皺の葉の中から、珊瑚に似た妖艶な色を浮べているのを矢代はじっと見ていると、傍の千鶴子もだんだん花そのもののように見えて来るのだった。

「何んて美しい花だろう。」

と矢代は思わず云った。

人と花とがこんなに一つに見えるということは、今までの彼にはまだ一度も経験のないことだった。