Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
よし、もっとやろう。」
と矢代は云ってイタリア人とまた踊った。いつ誰がどうして飲むのか分らなかったが、妙に皿だけが不思議な速度でひとり勝手に延び上った。
「こ奴、まるで知性みたいな奴だな。」
と久慈は皿が眼につく度びに、「ふふ。」とひとり笑ってシャンパンを飲んだ。マネージャーは一同の笑いさざめいているときでも、一片の笑顔も見せず、黙黙と現れ、細心の注意をもって氷の中のシャンパンの面を廻しては皿を積んでまた姿を消した。東野は久慈と矢代の張り合いがいつ果てるとも分らぬのを感じたのであろう、軍配を上げるように、
「さア、もう帰ろう。」
と二人に云うとイタリア人に勘定を云い附けた。すぐ来たビルを見ると二千フランあまりになっていた。三人は財布を合せて外へ出てから、東野のホテルで夜を明そうということにしてまたモンマルトルの坂を登った。
時計はもう夜中の三時を廻ろうとしていた。人通りはまったくなかった。黒黒とした高い建物の間で冴え返った瓦斯灯が月光のような青い光りを倒していた。真紅の色と音との世界から急に変った深夜の底の静けさなので、三人は暫く黙ってそれぞれ一人ずつ放れたまま歩いた。