Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
久慈は沼の岸べを見る思いで菖蒲の上の水色の空を眺めていると、教師の眼を逃がれて来た生徒たちらしい、散兵のように一人ずつその雑草の中を這い登って来て、日当りの良い位置をそれぞれ選んでひっくり返った。遊ぶ閑の少しもない厳格さで有名な学校であるだけに、屋根の上で生徒たちの忍ぶ散兵も見ていると滑稽な景色だった。あるものは早朝から夜中の二時三時まで学校から帰らず、机に獅噛みついて製図や計算に勉めている姿を久慈は毎夜眺めていた。
そのとき、ノックがしたので久慈は戸を開けると珍しく千鶴子が憂いげな顔で立っていた。久慈はネクタイを締めつつ千鶴子に椅子をすすめた。
「お珍らしいな。旅行は案外早かったようですね。」
自分が早く帰れと矢代に手紙を出したのを久慈は思い出したが、まさか手紙のままそんなに早くなろうとは思わなかっただけに、久慈とて千鶴子と矢代の早い帰りが先日からの疑問だった。
「でも面白かったわ。チロルはあたし忘れられない。ほんとにいい所よ。」
千鶴子は前の建築学校の屋根をうっとりとした眼で見ているうちに、
「あら、あんなとこで日向ぼっこしてるわ。」
と急に面白そうに笑った。