Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
黙って暫く待って下さらない。」
とこのように千鶴子の視線は物を云いながら、真紀子にだけ彼女は一寸お辞儀をして行きすぎた。ピエールの眼は急に光って二人をじっと見詰めていたが、何事か千鶴子の囁きに頷きつつホールの外の遊歩廊の方へ廻っていった。
「後からついて行きましょうか。」
真紀子は急にぴったりと矢代に胸をよせかけて訊ねた。
「いや、よしましょう。おかしい。」
「どうして?」
矢代は千鶴子を見たときからもう安心を感じ、足もゆっくりとなり黙ったままくるりと廻ろうとする真紀子を手もとに引きめぐらせて歩いた。――「ああそは彼の人かうたげの中に一人ありしは。」という第一幕のマルグリットの歌も、ある魅力を帯びて矢代の胸中で水脈を拡げるのだった。行きちがう人の中から、さまざまな香りが漂い移り、耳飾や曳き摺るような銀狐や、垂れ下った真珠、白や黄色、水色などとりどりなソアレの顕れるに随って、矢代は、絢爛無双な時間が今自分の周囲で渦巻きを起しているのだと思った。それは自分と非常にそぐわぬ時の流れのように思われたが、しかしいままさしくグランド・オペラに自分のいることだけは間違いはなさそうだった。