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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」と矢代は云って千鶴子を見て笑った。

通りの店店が網目になった鉄柵の大戸を閉め降ろしているので、街は牢に入れられた囚人のように見え、灯を消されたショウウィンドウのハンドバッグや化粧品などの商品類も、手錠を嵌められて俯向いている女に似ていた。矢代は変れば変るものだと思い鉄柵の格子の外からそれらを覗いていると、

「どうなるんでしょう。あたしたち。」と彼を見上げておどおどした視線で相談する風情に見えた。

「とにかく、コーヒー一杯も飲めないとなると、考えなくちゃならんね。」

もう間もなく千鶴子と別れなければならぬと考えることで、さきからかなり気力の疲れている矢代は、金銭は先ず持っていても餓えを満すに足りないというこの大都会の変動のさまも、亦多少は考えねばならなかった。

「こんなことが長くつづけばどうなるんでしょう。どこもかしこもこんなになるのかしら。」

千鶴子の問いに矢代は、「さア。」と云ったまま黙った。そして彼は、自分と君とも今はこれに似たような分らぬ淋しさに襲われているときだと思った。たとい日本へ帰ればまた会うことも出来るとはいえ、帰れば恐らく誰でも放れ散ってゆくようにどちらも会う気持はなくなってしまうにちがいない。