Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
壁に蔦の巻き絡んだ家の角を曲ったとき涼しい風が吹いて来た。すると、その風の中から出て来たようにカメラを下げた塩野が向うから歩いて来た。いつも日本人の行く所は定っているので、会い始めると日に二度三度と会うことはここでは珍しいことではなかった。
「しばらく。」
久慈はとかく紳士を気取りがちな十六区の日本人とは放れていたが、この塩野には特に十六区の臭いがなく、礼儀だけは正しいので彼は好んでよく遊んだ。
「写真を撮ろうと思ってぶらぶらしてるんだが、どこもお茶を飲ましてくれない。このへんにどっかないかな。」
「じゃ、いよいよやったな。ドミニックへ行こう。あそこなら大丈夫だ。」
久慈は近くの白系露人の経営しているドミニックの方へ歩いた。そこは帝政時代の伯爵一家の店だったが、スープが美味くて安いので、金が無くなると久慈たちのよく行く家である。
「通りはどこもみな休んでるの。」
「すっかり閉店だ。これからノートル・ダムへ行って、あそこを今日は一日がかりで撮ろうと思ってるんだ。」
写真専門の塩野は、ノートル・ダムに全精力を打ちあげていることを前から久慈は聞いていた。ドミニックへ行くと食事場に困ったものと見えて、もう東野の退屈そうな後姿が腰かけていた。