Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

僕と東野さんは春のぽかぽかするころ、ここの北塔の一番上の鉛の敷いてある部屋の上で、よく寝転んで日向ぼっこしたんですよ。あのころは良かったなア。下のお堂から、弥撒のパイプオルガンが静かに響いて来るし、聖歌を枕にしてるみたいで、うっとりいい気持ちに眠くなるし、セーヌ河が真下で木の芽を吹いているしね。それやまったく、ここの塔の屋根の上は、パリ第一等の眺めだ。」

「だって、ここは国宝建築物だから撮影は禁止だろ。」

久慈は大胆な塩野にも驚いたが、また彼の苦心のほども察しられて訊ねた。

「それや参観人の通れるところだけなら、三フラン出せば撮れるんだ。それでも大部分は禁止区だから困ったのだよ。門番の婆さんに、このお寺はパリの歴史そのものみたいなものだから、各国へこの燦然たる文化の象徴物を紹介しないというのは、けしからんと云ってね、おだてたりすかしたりの最中だ。また事実そうだよ。これだけの立派なものを、隠して置く手はないからな。これで門番の婆さんと親しくなるのに、僕は来る度びに果物を届けたり、チョコレートの贈物をしたり、だいぶ無い金を使わせられた。婆さんの娘の子が肺病で入院してるもんだから、この娘にまで贈物をしなくちゃならんのだ。