Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

しかしそれもこれも滅びぬものに較べれば皆夢のようなものかも知れぬ。――

久慈はノートル・ダムの怪獣の空とぼけた笑顔がまたも眼に泛んだ。あの高い所で世紀から世紀へぼろぼろに朽ちそうな肌を笑わせている顔を、矢代に一度見せてやりたかったと彼は思い、そうだ矢代に電話をかけてやろうと思ったが、彼も定めし夢のようなことをしているときだろうと思うと、それも今はやめたくなるのだった。

久慈は時計を見た。十時だった。もう十時なら日本では今正午ごろである。もうやがて眠ろうというのに向うはお昼か。――母親がお茶を立てながら俺に陰膳を供えていてくれるころだ。

ふとそう思うと、久慈ははたとそこで考えが停ってしまった。真紀子もいつかは誰かの母になる人だと思ったのである。何んとなく一番に平凡な考えばかりに突きあたっては戸迷いする自分の精神を、またも幾度となくそのままにさせつづけている自分だと久慈は思い、所詮はこんなところから、訳もなくふらりと真紀子と結婚してしまうのにちがいないとも思われて来るのだった。

しかし、もし真紀子に自分の子供が生れたとすると、何んと自分は冷たい心を持った父親だろう。