Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「長くはいないだろう。フロウレンスへ行きたいんだそうだが、君に宜敷くって終りに書いてあったよ。」
「終りにか。」
と矢代は云って笑った。矢代は久慈とも同船で来たのであった。久慈は社会学の勉強という名目のかたわら美術の研究が主であり、矢代は歴史の実習かたがた近代文化の様相の視察に来たのだが、船の中では久慈だけ千鶴子と親しくなった。矢代は今も彼らとともにマルセーユまで来た日の港港の風景を思い浮べた。
「もう一度僕はピナンへ行きたいね。あそこは幻灯を見てるような気がするが、君はあのあたりから千鶴子さんの後ばかり追っかけ廻していたじゃないか。あれも幻灯だったのかい?」
と矢代は云ってからかった。
「いや、あのときは夢を見ているようなものさ。何をしたのかもう忘れたよ。マルセーユへ上った途端に眼が醒めたみたいで、どうしても自分があんなに千鶴子さんの後ばかり追い廻したのか分らないんだ。いまだにあのときのことを思うと不思議な気がするね。」
「とにかく、あのマラッカ海峡というのは地上の魔宮だよ。あそこの味だけは阿片みたいで、思い出しても頭がぼっとして来るね。あんな所に文化なんかあっちゃ溜らないぜ。