Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

ふと孔子のそんな言葉が口から出て来たが彼にはそれも汚い言葉のように思われた。長い石の塀に添い樹木の幹の続いている前方の鋪道が坦坦としているにも拘らず、傾いた坂のように見える。久慈はその光線の斜角を縮めていくうちに一匹の犬が真向いの建物の下から出て来た。今まで自分ひとり美の世界だと信じていた楽しみも急に破られ、彼は近よる犬の姿を黒い毒液のような不潔な濁りに感じて見ていたが、それでも近よって来ると懐しかった。彼は蹲み込んだまま犬の下顎を撫でて、

「おい、こら。何んというんだ。」

と日本語で云った。犬は黙って首を膝へ擦りよせて舐め上ろうとするのを、彼は顔をひきつつまた同じことをフランス語で云ってみた。筋骨の見える痩せたセッタアは両足を腕にかけ眼を光らせ、日向臭い毛並みを垂れて彼を見詰めていた。前脚の蹠がぷよッと冷たく手の甲に感じるただ一疋の生物である。視界に肉眼と云えばそれよりない眼の光りに久慈も犬の首を強く抱き締めた。腕の中に皮膚をそのままにさせながらも、骨骼だけ彼の方へ延び上ろうとする犬の動きを感じると、久慈もだんだん感動を覚えなかなか放れることが出来なくなった。