Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
東野は頭の上の子供の自動車場の崩れるのが惜しそうな様子で頭を動かさず、
「坊や、もう御飯だから降りなさいよ。ええ?」
と下から父親らしい日本語で云った。しかし、子供は彼の声も聞えぬらしく夢中で東野の頭をしっかりと片手で抑えた。矢代はふと後ろの方を向いて見ていると、露地の入口の所から子供の母親らしい婦人が立ってこちらをじっと見ているのと視線が合った。その婦人はさっきから自分の子供を呼んで良いものかどうかと躊躇していたものと見え、謙遜な美しい微笑を泛べながら東野の方を見てやはりまだ立ちつづけていた。
「さア、行くぞ。よっこらしよ。」
東野は子供を抱いて下に降ろすと、
「夏のパリは貧乏人ばかりでいいですね。のびのびしてゆっくり出来る。極楽浄土じゃ。」
と云いつつあたりの夕暮の景色を娯しそうに眺め眺め、矢代と並んで食事場の方へ歩いていった。
もう三四時間で国境の満洲里へ着くというころ、少し矢代は眠くなった。いつでも汽車から降りられる支度を整え上衣を脱いだだけの姿でまた彼は寝台へ昇った。この列車の寝台は昇るというほど高かった。夜中など振動のため抛り落されそうになって眼が醒めたこともある。