Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
それも本国の法王へ出した報告文の中にあるのだから、誰もそこだけは見せたくなかったと見えて、リスボンの博物館からつい近年出て来たばかりの原稿なんだよ。僕はそれを読んで、非常に嬉しくなってね。さっそく久慈に報らせてやろうと思ってるんだが。」
こういうことを云うときでも、矢代は、塩野の視線を日本の内部へ今より深く潜り込ませてみたい気持ちを、どこかに感じていることは、千鶴子に対った場合とあまり変りのない自分だと思うのだった。また事実塩野や千鶴子に会うたびに必ず想い起す西洋の幻影の盛り上って来る勢力からすり脱けるだけでも、矢代は日ごとに工夫を変えねばならぬ、人知れぬ苦労を要した。もしこれがいつもつづけば、西洋で会った人のうち、忘れることの出来ないこれらの人とも別れて行くかもしれぬ危ささえ感じるのだった。そのくせ、塩野も矢代も黙ってしまうと、彼は前から気になっていた千鶴子の病いのことが重く頭に拡がり、窓の外で赤赤と群れている南天の実に日の射し込んだ艶も、高熱に病むものの閉じた瞼の静けさに似て見えた。
「しかし、千鶴子さんの熱は、あなたのと同じ質のものならもう少し早く来ている筈だと思うんだ、がそれともこんなことは、人によって遅速があるだろうから、やはりそうかな。