Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
やがて駅前の乱れた雪の中に客引きの提灯が並んだ。軽く吹き始めて来た粉雪の中を汽車が明るい灯の連りとなって入って来た。停った汽車の中から出て来た客に混り、千鶴子も黄鼬鼠の外套で、後に矢代の見知らぬ青年をつれて降りて来た。
「あら、わざわざすみません、ひどい雪ね。」
改札口の所の矢代を見付け、千鶴子はまだ車内の蒸気の熱に浮かされた頬で笑った。それはまた夢の中の彼女とはまったく違った顔だった。宿の番頭に荷物を渡してから千鶴子は由吉の弟の槙三という青年を矢代に紹介した。一見彼女の弟かと見える槙三は、帝大の学帽のまま最初から稀に見る穏やかな笑顔をつづけて黙礼したきり、始終黙りつづけていた。由吉とはおよそ違った性格らしかったが、矢代はすぐ好きになった。五人兄弟のうち千鶴子が末っ子だということを彼は記憶していた。しかし、一つ違いの兄のあることは迂濶に今まで忘れていたのを思い出し、まだ自分の頭も常態ではないのかもしれぬと、馬橇の箱の前で矢代はふと思った。汽車の明りは闇を残してまた駅から離れていった。
寂しくなった雪明りの駅前で、汽車の吐き降ろした千鶴子を中心にまだ華やかな匂いが舞い残っていた。