Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
一番物価の安い日本から一番高い物価のパリへ来た矢代は、街を歩いているだけで世界の二つのある極を見ているようなものだと思った。
ドームへ来ると、人の詰ったテラスの一隅に、日本人が三四人塊って話をしていた。皆は矢代を見ると、どこか痛さに触れるようにさっと横を向いたが、その中に東京で講演を聞いたことのある東野という前に作家をしていて、今はある和紙会社の重役をしている中年の男だけ一人、矢代の方を見詰めたまま黙って煙草を吹かしているのと視線が会った。その作家は矢代より少し早く神戸を発ったのを新聞で見たことがあったから、矢代も行けば逢うこともあろうと思っていたので、これを機会に話してみようと思い東野の傍の椅子を選んだ。
「失礼ですが、僕は一年ほど前にあなたが講演なすったのを、東京で聞いたことがあるんですよ。私はこう云うものです。」
と矢代は云って名刺を出した。
「そうですが。僕は先日来たばかりで何もまだこちらは知らないんですよ。」
「僕もそうです。あなたより二船ほど後なんですよ。」
「じゃ、僕の方が兄貴なわけですね。宜敷く。」
淋しそうな東野は自分の名刺を出そうとして財布の中を探し始めた。