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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は汚れた煙があたりを取り包んでいるようにだんだん息苦しくなって来た。

「もうほんとに行きましょう。久慈さん、待ってらしてよ。」

千鶴子は冷たい表情になって立ち上った。矢代も腰を上げてベンチから放れていった。

一団の繁みの胴をコルセットのように締めつけている円形に並んだ鉄のベンチに、人は一人もいなかった。さわさわと立つ風にどこからともなく舞い散って来る落花を仰いでいると、矢代は今は何も忘れ、ただ故郷の空の色を感じて胸は淋しく湿って来た。

「どうもここへ来ると、僕は帰りたくなるんですよ。」

「あたしもだわ。」

矢代はポケットに手を突き込みながら、ここでは恋愛などは、自分の故郷へ帰りたい心に比べれば物の数ではないと思い、柔い砂を靴先で蹴り蹴り歩いた。樹間の黄色な天蓋の下でメリゴラウンドが空転しつつ光っていた。千鶴子は樹の間のほの白い蕾を見廻し、

「でも、もうすぐ、マロニエが咲くのね。」と云った。

「そう、マルセーユより一と月パリの方が遅れていますね。」

「もう一二ヵ月すればきっと矢代さん、日本へはもう帰らないって仰言ってよ。」

多分アンリエットのことを云うのであろうと矢代も苦笑を洩したが、それも向きに弁明する気もなく砂の鳴るのを聞きながら歩いた。