Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひめくり

日めくり

壺井 栄

Lesen Sie 日めくり (ひめくり) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.884 Zeichen · 34 Bildschirme

Aozora Bunko

ぽつりぽつりと、落ちてきた。団地の中では雨までが固く、おもむきのない感じがする。杖にしていた傘をひろげながら、元子は、

「壮一がね、この団地が羨ましいんだってよ。今度はあんなお家、建ててって、太郎にたのむんだって」

建築やの太郎の設計で建てた、しょうしゃな住宅が、幼い壮一には気に入らないらしい。遊び友だちも団地の子が多いからだろうか。

「どうしているかな」

目の前にもう灯が見えてきた。

いってらっしゃーい。――

広いぬれ縁に出て、力一ぱい手をふりながら見おくるのだというその子と父の姿は、いつの日に見ることが出来るのか。

「御仏前の、お見舞でも持ってってやろうかしら」

元子は、一昨年の春の、まだ浅いころの出来事を思い出していった。肺炎で寝ていた元子のところへ、ある出版社から見舞品が届けられた。デパートの紙包みの外側から見たところ、どうやら果物らしかった。食慾をなくしていた元子は、

「メロンなら、食べたいわ」

附添いの小母さんはすぐ、元子の枕もとで包みを解いた。そして、あらっ! と叫んだ。元子がふりむくと、小母さんは、今あけた籠をさげてうろうろしている。気がつくと、大きな字で、御仏前と印刷した紙ぎれが、貼りついている。