Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひめくり

日めくり

壺井 栄

Lesen Sie 日めくり (ひめくり) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.884 Zeichen · 34 Bildschirme

Aozora Bunko

四

――って、感慨ぶかそうにいうんだよ」

「そう」

「貘さんの癌と、なにか因縁でもありそうにいうんだな。それきりだまりこんでたね。おれもだまってた。しかし、なんにも云わんところに、やっぱり、なにか、思いがこもってたね」

「…………」

「それで、しばらくしてからぼそっとつぶやくんだ。たばこが、このごろ、うまくなりましてね――」

ううっ、とこもったような嗚咽が、文吉ののどからもれた。くらい欅横丁に道をかえて、老夫婦はしばらく無言で突っ立っていた。

四

山形の家は、並川家と同じ町内の、歩いて十分ほどのところにある。勤めの行き帰りに、山形もよく寄っていったし、ひろみときたら、買物の時はもちろん、そうでない時にも、二人の子供をつれて毎日のようにやってきた。そんなとき大人ばかりの並川家は急に若がえり、

「おうおう、きたかい、きたかい」

などと、元子など仕事をおっぽり出し、目尻をさげて歓迎した。孫は上の壮一が幼稚園で下は誕生をすぎたばかりの女の子であった。下の千咲が生れるとき、元子は二度目の発作を起して入院していた。持病の腎臓と脚気のために、上の男の子の時も早期に人工出産したひろみは、二度めのときの産院へのゆきかえりを山形と一しょに元子の病室に立ちよった。