Japanische Klassiker mit Furigana
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ひめくり
日めくり
壺井 栄
Lesen Sie 日めくり (ひめくり) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.884 Zeichen · 34 Bildschirme
が、今日はちがう。
「病人へ、もってってやる」
すると、その花をことづかってきた息子の太郎は、ちょっと言葉をつまずかせながら、
「お母さんにくれたんだから、お母さんの部屋においたら」
だが彼女はかぶりをふり、
「悪いけど、今日は、もってってやる」
太郎もすぐさとって、
「そうだね」
と同意した。花の贈り主は、太郎の親しい人だった。
「今日は、バスでいこうかな」
花のほかには荷物もないのだし、と思って、いつもはハイヤーで出かける妻がそういうと、病気上りの妻のひとり歩きをいつも気にしている夫は、
「じゃあおれも一しょにいこう。そうだ、ついでに蜂蜜を持ってってやろうか。唇がひどくあれとったからな」
「それいいわ。りんご酢も少し持ってってみましょうか。蜂蜜とまぜたの、ひょっとしたらのめるかもしれないわよ。口あたりいいから」
一縷の望みに妻の声はあかるかった。野菜スープも口にしない病人ではあるが、これならのどを通るかもしれない。
満員のバスは席をゆずってくれる人もなく、細い道路をひどくゆられながら終点の阿佐ヶ谷駅前についた。片手に花をもった妻と、小さな蜂蜜の瓶をさげた夫は、一ばんあとからのろのろと下りた。