Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
彼女はお茶を一ぱい飲んでちょっと休み、それから夕飯の準備にかかろうと思って、庖厨の庭から入り、上にあがろうとすると、椀へ入れた黍の餅が眼に注いた。黄色な餅の数は五つばかりあった。
(これは何処から持って来てくれたろう)
老婆は餅の贈り主を考えてみた。本家の女、むこう隣の小作人の女房、家から西になった門口に大きな榎のある家の老婆、こんな人達のことが浮んだ。
(大榎の婆さんには、さっき逢ったし、本家は昨日団子をくれたばかりじゃから、また今日くれることもなかろう、それではむこうの馬吉の家か)
むこう隣の小作人の家らしくもあったが、其処は多忙で餅などをこしらえている余裕のないことを知っている老婆は、どうも其処と思うこともできなかった。
(まあ、いい、いずれ判るろうから、判った時に礼を云うとして、お爺さんにあげて置いて、後で戴くとしよう)
老婆はあがって餅の椀を持って次の室へ往き、其処の仏壇に供えて、庖厨の竈の前へ戻り、肥った体を横坐りにして、茶釜から冷たい茶を汲んで飲んだ。腓の張りは何時の間にか忘れていた。彼女は小半時も其処に坐ってから、やっと夕飯の準備にかかった。