Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme
備後は弾を十個位造えるつもりであった。彼は鋳鍋の柄を持って鋳込んだ弾は幾個(いくつ)あるだろうと思って、台の上にのせた鉛の鋳込んだ型に眼をやった。鋳込んだ型は九個(ここのつ)であった。
「九つ、も一つじゃ」
備後は鋳鍋をまた火の上にやりながら見るともなしに台の向うの方へ眼をやった。赤毛の肥った飼猫が前肢を立ててじっと此方を見ていた。
「ほう、見ているな」
備後はこう云って微笑しながら鋳鍋の鉛は出来たようであるから、それをまた一つの型の穴に鋳込んだ。
「これで、十だ、十あれば、大丈夫、これで、よし、よし」
備後は鋳鍋を台の端へのせて初めに鋳込んだ型の泥を落しはじめた。泥の中からは白い十匁弾が光って出て来た。この時備後の方を見ていた猫は、そっと何処へか往ってしまったが、備後はそれを知らなかった。備後は三つ目の弾を型の中から執りだした時、未だ鋳鍋の底にすこし鉛の残っていたことを思いだした。で、ついでに、も一個(ひとつ)用意に造えて置こうと思った。彼は鍋の冷え切らないうちにと急いでそれを火にかけた。そして、一つ二つ型から弾を出した後に、鍋の中を覗いて鉛が熔けたのを見ると、それを残りの型に鋳込んだ。