Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.412 Zeichen · 25 Bildschirme
四
道に草が萌え、花が咲きはじめると、彼は色の変った菫を根ごと抜いていっては墓のまわりに植えた。
「お母さまは花がお好きでしたねえ」そんなことを囁やきながら、……そして来年の春になって、その菫の群がいっぱい咲きだしたらどんなに美しいだろう、そう空想して胸をおどらせていたが、間もなく叔母の手でそれはみんな抜き捨てられてしまった。
「お墓のまわりには樒のほかに草花などを植えるものではありません、こんなことをすると人に嗤われますよ」
そして塾の帰りなどに寄りみちをするといって厳しく叱られた。彼が父にあてて、早く江戸へ呼んで呉れるようにと、たびたび手紙を出すようになったのはその頃からのことであった。
四
その年の秋には由利は結婚することになっていた。相手は藩の重役の長男で、やはり重役の三宅五郎左衛門という人が仲人だった。それは三年まえからの約束だったが、嫂の病臥とそれにつづいた家庭の事情とで延び延びになっていたのである。そして今年の秋こそというその期日が近づいてくると、由利はこんどもまた延期をすると云いだした。弁之助には精しいことはなにもわからなかったが、秋のはじめに仲人の三宅五郎左衛門がしばしばおとずれ、叔母とながい時間はなして帰るのを見た。