Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.170 Zeichen · 22 Bildschirme
……病みついていた妻は新らしい住居に移ってからも床を離れることができず、夏のはじめには医者から恢復の望みのないことを告げられた。どんなに靱負のまいったことだろう。生れて十月にも満たない牧二郎はよく夜泣きをした。彼はなかなか泣きやまない嬰児を抱きあげ、馴れぬ子守唄を歌いながら、仄暗い行燈の光の下にうつらうつらまどろんでいる病床の妻の窶れはてた寝顔を見ては、息苦しい絶望にうたれた幾夜かの記憶を忘れることができない。けれども不幸はそれだけではなかった、新秋八月にはいると間もなく、長男の臣之助が悪質の時疫にかかり、僅か三日病んで急死したのである。――不幸は伴をともなう、靱負はその言葉を現実に耳許で囁かれるような気持だった。そして妻のみぎはは臣之助に三十日ほど後れて亡き人となった。
こういう状態のなかで、靱負の唯一のたのみは婢のおかやであった。会津を退転するとき、貯えも多からず病妻を抱えての浪人なので、家士召使にはみな暇を遣ったが、おかや独りはどうしても出てゆかず、殆んど縋りつくようにして一緒に付いて来た。……十五の年から仕えてもう二十歳になる、縹緻も悪くはないし、性質の明るい、疲れることを知らないかと思うほどよく働く娘で、妻のみぎははまるで妹のように愛していた。