Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.187 Zeichen · 24 Bildschirme
四
いま二人きりであの貧しい部屋のつつましい食膳に向かっているじぶんだ。菜の皿はひとつ、汁椀の着くことさえ稀で、漬物の鉢だけが変らない色どりである。いま眼の前にあるゆたかな膳部からみればかなしいほど貧しいものだ、然しそのひと皿の菜をどんなに心こめて作るだろう、また父や松之助がどんなによろこんで喰べて呉れることだろう。頼んで来た石原の妻女はよく気のまわる親切なひとだった、父の好物もあらまし告げて来たが、今宵はどんなしたくが出来たであろうか、父の気にいるものだろうか、もしかして酒をあがりすぎはしないかしらん。……お高のあたまはこういう考えでいっぱいだった、なにを喰べたかも覚えず、どういう会話がとり交わされたかも知らなかった。そして終るとすぐ自分のために用意されたという部屋へひきこもり、なにか話しかけたそうな梶女にも「疲れているから」と断わって、まだ宵のうちから夜具のなかにはいってしまった。
四
明くる朝、起きてきたお高の眼がいたいたしいほど赤く腫れぼったくなっているので、梶女がびっくりして、
「どうおしだ」
と訊ねた。お高はさびしげに頬笑んだ、
「寝つかれたのでございましょう、少しやすみすごしましたから」