Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.187 Zeichen · 24 Bildschirme
深志というところの端に近く、身分の軽いさむらい屋敷がひとかたまりになっている、そのなかでも貧しげな古びた幾棟かのなかに、その家はあった。目隠しというばかりの塀をとりまわした中にささやかな庭があり、枝ぶりのいじけた勢いのない松が門の脇に立っていた。板葺の屋根は朽ち乾いて松毬のようにはぜ、小さな玄関の柱やはめ板は雨かぜに曝されて、洗いだしたように木目が高くあらわれていた。軒は傾き庇はなみをうっている、まわりにゆとりがあるのと、部屋の数が少し多いかと思えるだけで、そのほかは松代の家とは大差のない住居だった。
「私はこの家に五つまでいたのですよ」
保之丞はそう云ってなんの屈託もなく笑った。
「あの窓の下の地面に蟻地獄がいましたっけ、それを捕って手のひらを這わせるんです、するとそいつは手の皮の中へもぐり込もうとする、むずむずして擽ったいんですが、その恰好がおもしろいのでよくやったものです、ご存じですか」
そんなことを興ありげに云った。お高はふと、この弟もいまの屋敷よりはこの貧しい家のほうに心ひかれているのではないか、そんなことを考えながら間もなく踵をかえした。