Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
そこが奥様は都育です。御親類の御女中方は、いずれも質素な御方ばかりですから、就中奥様御一人が目立ちました。奥様は朝に粧り、晩に磨き、透き通るような御顔色の白過ぎて少許蒼く見えるのを、頬の辺へはほんのり紅を点して、身の丈にあまる程の黒髪は相生町のおせんさんに結わせ、剃刀は岡源の母親に触させ、御召物の見立は大利の番頭、仕立は馬場裏の良助さん――華麗の穿鑿を仕尽したものです。田舎の女程物見高いものは有ません。奥様が花やかな御風俗で御通りになる時は、土壁の窓から眺め、障子の穴から覗き、目と目を見合せて冷な笑いかたを為るのです。そんなことは奥様も御存なしで、御慈悲に拝ませて遣るという風をなさりながら町を御歩行なさいました。たまたま途中で御親類の御女中方に御逢なさることが有ても、高い御挨拶をなさいました。奥様の目から見ると、この山家の女は松井川の谷の水車――毎日同じことをして廻っている、とまあ映るのです。たとえ男が長い冬の日を遊暮しても、女は克く働くという田舎の状態を見て、てんで笑って御了いなさる。全く、奥様は小諸の女を御存ないのです。これを御本家始御親類の御女中に言わせると折角花車な当世の流行を捨て、娘にまで手織縞で得心させている中へ、奥様という他所者が舞込で来たのは、開けて贅沢な東京の生活を一断片提げて持って来