Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

船

船

島崎藤村

山本さん――支那(しな)の方に居る友人の間には、調戯(からかい)半分に、しかし悪い意味で無く「頭の禿(は)げた坊ちゃん」として知られていた――この人は帰朝して間もなく郷里(くに)から妹が上京するという手紙を受取ったので、神田(かんだ)の旅舎(やどや)で待受けていた。唯(たった)一人の妹がいよいよ着くという前の日には、彼は二階の部屋に静止(じっと)して待っていられなかった。旅舎を出て、町の方へ歩き廻りに行った。それほど待遠しさに堪(た)えられなく成った。

東京の町中の四季を語っているような水菓子屋の店頭(みせさき)には、冬を越した林檎(りんご)や、黄に熟した蜜柑(みかん)、香橙(オレンジ)などの貯えたのが置並べてあった。二月末のことで、町々の空気は薄暗い。長いこと東京に居なかった山本さんは、新式な店の飾り窓の前などを通りながら、往来(ゆきき)の人々をよく注意して歩いた。以前には戦争を記念する為の銅像もなく、高架線もなく、大きな建築物(たてもの)も見られなかった万世橋附近へ出ると、こうも多くの同胞が居るかと思われるほど、見ず知らずの男女(おとこおんな)が広い道路を歩いている。