Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
君は浮世絵の方から出た人であった。君の女の児は幼稚園へ通う途中で、あやまって電車のために引き殺されたということで、それを私に泣いて話した。この可傷(いたま)しい子供の失い方をした画家は、絶えず涙で、お房の苦しむ方を見ていた。
今はただ幼いものの死を待つばかりである。こう私は二三の友達の許(もと)へ葉書を書いた。翌日はお房の呼ぶ声も弱って来て、「かあちゃん、か――」とか、「馬鹿ちゃん、馬」とか、きれぎれに僅(わず)かに聞えるように成った。家の方も案じられるので、私は皆川医学士に子供のことを頼んで置いて、それからちょっと大久保へ帰った。
放擲(うっちゃらか)して置いた家の中はシンカンとしていた。裏に住む女教師なども病院の方の様子を聞きに来た。寂しそうに留守をしていた姪は、留守中に訪ねてくれた人達だの、種々な郊外の出来事だのを話して、ついでに、黒が植木屋の庭の裏手にある室(むろ)の中で四匹(ひき)ばかりの子供を産んだことを言出した。幾度(いくたび)饑(う)え、幾度殺されそうにしたか解らないこの死(し)に損(そこな)いの畜生にも、人が来て頭を撫(な)でて、加(おまけ)に、食物(くいもの)までも宛行(あてが)われるような日が来た。