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Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

山本さんは独(ひと)りで手を揉(も)んだ。そして、すこし紅く成った。何故かというに九年も前の話だから……しかも十七ばかりに成る、妹のような娘から、唯(たった)一度の接吻(キス)を許されたのだから……

その娘は腹違いの妹の学校友達で、お新と言って、色の黒い理窟(りくつ)好な異母妹(いもうと)とは大の仲好だった。仙台の方にあの娘達の入る学校も無いではないが、二人は東京へ出て、同じ寄宿舎から同じ学校へ通った。丁度山本さんは朝鮮から帰って来て、郷里の方で一夏暮したことが有った。暑中休暇で娘達も家に居る頃で、毎日のようにお新は異母妹の許(ところ)へ遊びに来た。妹達が「兄さん、兄さん」と言ってめずらしがれば、お新も同じように彼を呼んで、まるで親身の妹かなんぞのように忸々(なれなれ)しく彼の傍へ来た。

彼は菖蒲田(しょうぶだ)の海岸の方へ娘達を連れて行ったことを思出した。異母妹とお新とは、互に堅く腕を組合せて、泡立ち流れる潮の中を歩いたことを思出した。水浴する白い濡(ぬ)れた着物が娘達の身体に纏(まと)い着いたことを思出した。時々明るい波がやって来ては、処女(むすめ)らしい、あらわな足を浚(さら)ったことを思出した。