Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
時々彼女は白い絹(きぬ)※子(ハンケチ)で顔を拭(ふ)きながら、世慣れた調子で談(はな)したり笑ったりした。どうかするとお牧にでも話しかけると同じように話した。
こういう人の側に、山本さんは遠慮勝に腰掛けて、往時(むかし)お新や異母妹(いもうと)と一緒に菖蒲田の海岸を歩いた時の心地(こころもち)に返った。海は山本さんを九年若くした。あの頃は皆な何か面白いことが先の方に待っているような気のしたものだった。山本さんは今、丁度その気で、船の上から熱海の方の青い海を眺めた。
何卒(どうか)してお新を往時(むかし)の心地(こころもち)に返らせたいと思って、山本さんは熱海まで連れて行ったが、駄目だった。そこで今度は伊東の方へ誘った。
翌日の午後は、復た二人は伊東行の汽船の中に居た。
前の日にも勝(まさ)る好天気だ。二人は楽しい航海を続けることが出来た。海は一層濃く青く見えた。半島の南端では最早(もう)紅い椿(つばき)の花が咲くという程の陽気で、そよそよとした心地の好い南風が吹いて来た。透き徹るような空の彼方(かなた)には、大島も形を顕(あら)わした。
船房に閉籠(とじこも)っている乗客は少なかった。