Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

このお新の心やすだては、伊東へ着いて艀から陸へ上った時も変らなかった。伊勢詣(まいり)の道連のように山本さんを頼りにして、温泉宿のある方へ軽く笑いながら随いて行った。

宿の二階へ上って見ると、二人はいくらか遠く来たことを感じた。

「奥さん、御浴衣(ゆかた)は此方(こちら)に御座います」

という女中の言葉を、お新はさ程気にも掛けないという風で、その浴衣に着更(きか)えた後、独りで浴槽(ゆぶね)の方へ旅の疲労(つかれ)を忘れに行った。

やがてお新は戻って来た。部屋の隅(すみ)には鏡台も置いてあった。彼女はその前に坐って、濡れた髪を撫でつけた。

山本さんは最早湯から上って来ていた。大きな卓(つくえ)を真中にして、お新も瀟洒(さっぱり)とした浴衣のまま寛(くつろ)いだ。山本が勧める巻煙草を、彼女は人差指と中指の間に挿(はさ)んで、旅に来たらしく吸った。

夕飯には、山本さんはすこしばかりビイルをやった。

「貴方も召上りますか」

と女中が差したコップをお新は受けて、甘そうに泡立つビイルを注がせた。「ホ――お新ちゃんはナカナカ話せる」と眼で言わせた山本さんの方は、反って顔が紅く成った。