Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
春の新学年前から塾では町立の看板を掛けた。同時に、高瀬という新教員を迎えることに成った。学年前の休みに、先生は東京から着いた高瀬をここへ案内して来た。岡の上から見ると中棚鉱泉とした旗が早や谷陰の空に飜っている。湯場の煙も薄く上りつつある。
桜井先生は高瀬を連れて、新開の崖の道を下りた。先生がまだ男のさかりの頃、東京の私立学校で英語の教師をした時分、教えた生徒の一人が高瀬だった。その後、先生が高輪の教会の牧師をして、かたわらある女学校へ教えに行った時分、誰か桜井の家名を継がせるものをと思って――その頃は先生も頼りにする子が無かったから――養子の話まで仄めかして見たのも高瀬だった。その高瀬が今度は塾の教員として、先生の下で働きに来た。先生から見れば弟子か子のような男だ。
石垣について、幾曲りかして行ったところに、湯場があった。まだ一方には鉋屑の臭気などがしていた。湯場は新開の畠に続いて、硝子窓の外に葡萄棚の釣ったのが見えた。青黒く透明な鉱泉からは薄い湯気が立っていた。先生は自然と出て来る楽しい溜息を制えきれないという風に、心地の好い沸かし湯の中へ身を浸しながら、久し振で一緒に成った高瀬を眺めたり、田舎風な浅黄の手拭で自分の顔の汗を拭いたりした。