Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
毎日のように高瀬は塾の受持の時間を済まして置いて、家へ帰ればこの畠へ出た。ある日、音吉が馬鈴薯の種を籠に入れて持って来て見ると、漸く高瀬は畠の地ならしを済ましたところだった。彼の妻――お島はまだ新婚して間もない髪を手拭で包み、紅い色の腰巻などを見せ、土掘りの手伝いには似合わない都会風な風俗で、土のついた雑草の根だの石塊などを運んでいた。
「奥さん、御精が出ますネ」
と音吉は笑いながら声を掛けて、高瀬の掘起した畠を見た。サクの切り方が浅かった。音吉は高瀬から鍬を受取って、もっと深く切って見せた。
「この辺は、まるで焼石と砂ばかりのようなものでごわす。上州辺と違って碌な野菜も出来やせん」
と音吉が言った。
彼は持って来た馬鈴薯の種を植えて見せ、猶、葱苗の植え方まで教えた。
この高瀬が僅かばかりの野菜を植え試みようとした畠からは、耕地つづきに商家の白壁などを望み、一方の浅い谷の方には水車小屋の屋根も見えた。細い流で近所の鳴らす鍋の音が町裏らしく聞えて来るところだ。激しく男女の労働する火山の裾の地方に、高瀬は自分と妻とを見出した。
塾では更に校舎の建増を始めた。