Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
教員の手が足りなくて、翌年の新学年前には広岡理学士が上田から家を挙げて引移って来た。
子安という新教員も、高瀬が東京へ行った序に頼んで来た。子安は、高瀬も逢ったことが無い。人の紹介だ。塾ではどんな新教員が来るかと皆な待ち受けた。子安が着いて見ると案外心易い、少壮な学者だ。
こうなると教員室も大分賑かに成った。桜井先生はまだ壮年の輝きを失わない眼付で、大きな火鉢を前に控えて、盛んに話す。正木大尉は正木大尉で強い香のする刻煙草を巻きながら、よく「軍隊に居た時分」を持ち出す。時には、音吉が鈴を振鳴しても、まだ皆な火鉢の側に話し込むという風であった。
「正木さん、一寸この眼鏡を掛けて御覧なさい」
「まだ私は老眼鏡には早過ぎる――ヤ、これは驚いた――こう側へ寄せたよりも、すこし離した方が猶よく見えますナ――広岡先生、いかが」
「成程、よく見えます」
「ヒドイものですナ――」
こんな話をしても、時は楽しく過ぎた。
近くて湯のある中棚は皆なの交歓に適した場所だった。子安がいくらか土地に馴染んだ頃、高瀬も誘われて塾から直ぐに中棚の方へ歩いて行って見た。子安が東京から来て一月ばかり経つ時分には藤の花などが高い崖から垂下って咲いていた谷間が、早や木の葉の茂り合った蔭の道だ。