Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
栗の樹に居た虫を思出した。その虫を踏み潰して、緑色に流れる血から糸を取り、酢に漬け、引き延ばし、乾し固め、それで魚を釣ったことを思出した。彼は又、生きた蛙を捕えて、皮を剥ぎ、逆さに棒に差し、蛙の肉の一片に紙を添えて餌をさがしに来る蜂に与え、そんなことをして蜂の巣の在所を知ったことを思出した。彼は都会の人の知らない蜂の子のようなものを好んで食ったばかりでなく、田圃側に葉を垂れている「すいこぎ」、虎杖、それから「すい葉」という木の葉で食べられるのを生でムシャムシャ食ったことを思出した。
高瀬の胸に眠っていた少年時代の記憶はそれからそれと復活って来た。彼は幾年となく思出したことも無い生れ故郷の空で遠い山のかなたに狐火の燃えるのを望んだことを思出した。気味の悪い夜鷹が夕方にはよく頭の上を飛び廻ったことを思出した。彼は初めて入学した村の小学校で狐がついたという生徒の一人を見たことを思出した……
学士が窓のところへ来た。
「広岡先生の御国はどちらなんですか」と高瀬が聞いた。
「越後」
と学士は答えた。
昼過に高瀬が塾を出ようとすると、急に門の外で、
「この野郎打殺してくれるぞ」