Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

「あれ、御寝っていらしったら、どうでございます」

「なに、起きましょうよ」

私はよく母親の肩を揉せられましたから、その時奥様のうしろへ廻りまして、柔な御肩に触ると、急に母親を想出しました。母親の労働く身体から思えば、奥様を揉む位は、もう造作もないのでした。

「お世辞でも何んでもないが、お定はなかなか指に力があるのねえ。お前のように能くしておくれだと、真実に私ゃ嬉しい。旦那様も、日常褒めていらっしゃるんだよ」

それから奥様は私の器量までも御褒め下さいました。奥様が私を御褒め下さるのは、いつも謎です、――御器量自慢でいらっしゃるのですから。その時も私の方から、御褒め申せば、もう何よりの御機嫌で、羽翅を張げるように肩を高くなすって、御喜悦は鼻の先にも下唇にも明白と見透きましたのです。

「ねえ、お定、お前は吾家へ来る御客様のうちで、誰様が一番好とお思いだえ」

「そうで御座ますねえ……まあ、奥様から仰って見て下さい」

「否、お前からお言いよ」

「私なぞは誰様が好か解りませんもの」

「あれ、そうお前のように笑ってばかりいちゃ仕様がない」

「それじゃ笑わずに申しますよ。ええ、と、銀行の吉田さん」