Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
こう高瀬は泉に話すこともあった。
相変らず皆な黙って働いている塾の方から、高瀬は家へ帰ろうとして、午後の砂まじりの道を歩いた。停車場前へ出た。往来の両側には名物うんどん、牛肉、馬肉の旗、それから善光寺詣の講中のビラなどが若葉の頃の風に嬲られていた。ふと、その汽車の時間表と、ビイルや酒の広告と、食物をつくる煙などのゴチャゴチャした中に、高瀬は学士の笑顔を見つけた。
学士は「ウン、高瀬君か」という顔付で、店頭の土間に居る稼ぎ人らしい内儀さんの側へ行った。
「お内儀さん、今日は何か有りますかネ」
と尋ねて、一寸そこへ来て立った高瀬と一諸に汽車を待つ客の側に腰掛けた。
極く服装に関わない学士も、その日はめずらしく瀟洒なネクタイを古洋服の胸のあたりに見せていた。そして高瀬を相手に機嫌よく話した。どうかすると学士の口からは軽い仏蘭西語などが流れて来た。
「そこはあまり端近です。まあ奥の方へ御通りなすって――」
と亭主に言われて、学士は四辺を見廻わした。表口へ来て馬を繋ぐ近在の百姓もあった。知らない旅客、荷を負った商人、草鞋掛に紋附羽織を着た男などが此方を覗き込んでは日のあたった往来を通り過ぎた。