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Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

何となく荒れて行くような屋根の下で、その晩遅く高瀬は枕に就いた。時々眼を開いて見ると、部屋の中まで入って来る饑えた鼠の朦朧と、しかも黒い影が枕頭に隠れたり顕れたりする。時には、自分の身体にまで上って来るような物凄い恐怖に襲われて、眼が覚めることが有った。深夜に、高瀬は妻を呼起して、二人で台所をゴトゴト言わせて、捕鼠器を仕掛けた。

その年の夏から秋へかけて、塾に取っては種々な不慮の出来事があった。広岡学士は荒町裏の家で三月あまりも大患いをした。誰が見ても助かるまいと言った学士が危く一命を取留めた頃には、今度は正木大尉が倒れた。大尉は奥さんの手に子供衆を遺し、仕掛けた塾の仕事も半途で亡くなった。大尉の亡骸は士族地に葬られた。子供衆に遺して行った多くの和漢の書籍は、親戚の立会の上で、後仕末のために糴売に附せられた。

桜井先生の長い立派な鬚は目立って白くなった。毎日、高瀬は塾の方で、深い雪の積って行くような先生の鬚を眺めては、また家へ帰って来た。生命拾いをした広岡学士がよくよく酒に懲りて、夏中奥さん任せにしてあった朝顔棚の鉢も片附け、種の仕分をする時分に成ると、高瀬の家の屋根へも、裏の畠へも、最早激しい霜が来た。