Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
母親(おふくろ)は源を休ませて置いて、炉辺で握飯をこしらえました。父親も不幸な悴(せがれ)の為に明日履く草鞋(わらじ)を作りながら、深更(おそく)まで二人で起きていたのです。度を過した疲労の為に、源もおちおち寝られません。枕許の畳を盗むように通る鼠の足音まで恐しくなって、首を持上げて見る度に、赤々と炉に燃上る楢の火炎(ほのお)は煤けた壁に映っておりました。源は心(しん)が疲れていながら、それで目は物を見つめているという風で、とても眠が眠じゃない――少許(すこし)とろとろしたかと思うと、復た恐しい夢が掴みかかる。
夜中にすこし時雨(しぐれ)ました。
源は暁前(よあけまえ)に起されて、馬小屋へ仕度に参りましたが、馬はさすがに昨日の残酷な目を忘れません。蚊(か)の声のする暗い隅の方へとかく逡巡(しりごみ)ばかりして、いつもの元気もなく出渋るやつを、無理無体に外へ引出しました。お隅の萎れた身体は鞍(くら)の上に乗せ、足は動かさないように聢(しっか)と馬の胴へ括付(くくりつ)けました。母親(おふくろ)は油火(カンテラ)を突付けて見せる――お隅は編笠、源は頬冠(ほっかぶ)りです。