Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
「否、どう致しやして。家で造えやした味噌漬で、召上られるような品じゃごわせんが」
「それは何よりなものを――まあ、御茶一つお上り」
「もう何卒御構いなすって下さいますな」
「よくまあ、それでも早く来てくれましたねえ。あの、何ですか。名は何と言いますの」
「はい、お定と申しやす。実に不調法者でごわして。何卒まあ何分宜しく御願申しやす」
私はつんつるてんの綿入に紺足袋穿という体裁で、奥様に見られるのが何より気恥しゅう御座ました。御傍へ添れば心持の好い香水が顔へ匂いかかる位、見るものも聞くものも私には新しく思われたのです。御奉公の御約束も纏りました。母親は華麗な御暮や美しい御言葉の裡に私を独残して置いて、柏木へ帰って了いました。
御本宅は丸茂という暖簾を懸た塩問屋、これは旦那様の御兄様で、私の上りました御家は新宅と申しました。御本宅は大勢様、奉公人も十人の上遣っておりましたが、新宅は旦那様に奥様、奉公人といえば爺さんが一人と、其処へ私が参りましたから、合せて四人暮。御本宅は旧気質の土地風。新宅は又た東京風。家の構造を見比べても解るのです。旦那様は小諸へ東京を植えるという開けた思想を御持ちなすった御方で、御服装も、御言葉も、旧弊は一切御廃し。