Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

「誰方のところへ」

「なにも私は御恩を忘れて御無沙汰をしてるんじゃ無いけれど……」

「まあ、好笑いわ」

「つい、多忙くッて手紙を書く暇も無いもんだから」

「貴方、何を言っていらっしゃるの」

「え、私は何か言いましたか」

「言いましたとも。もう半年も手紙を遣らないの、御恩を忘れはしないの、手紙を書く暇がないのッて、――必と……思出していらっしゃるんでしょう」と奥様は私の方へ御向きなすって、

「ねえ、お定、桜井さんは御容子が好っていらっしゃるから……」

「止して下さい。貴方はそう疑り深いから厭さ」と男はすこし真面目になって、「こうなんです――まあ、聞いて下さい。私には義理ある先生が有ましてね、今下谷で病院を開いているんです。私もその先生には、どんなに御世話に成ったもんだか知れません。全く、先生は私を子のように思って、案じていて下さるんで。私がこれまでに成ったというのも、先生の御蔭ですからね。ですから、『貴様は友達の出世するのを見ても羨ましくはないか、悪も好加減にしろ』なんて平素御小言を頂戴するんです。……先生の言う通りだ――立身、出世、私はもうそんな考が無くなって了った。