Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

薦が被けて有りましたから、死顔は見えません、濡乱れた黒髪ばかり顕れていたのです。

それは胸を打たれるような光景でした。同じ奉公の身ですもの、何の心も無しに見てはおられません。私はもう腹立しさも口惜しさも醒めて、寂しい悲しい気に成ました。娘盛に思いつめたおつぎさんこそ不運な人。女の身程悲しいものは有りません。変れば変る人の身の上です。僅か小一年ばかりの間に、おつぎさんのこの変りようはどうでしょう。おつぎさんばかりでは有りません。旦那様も変りました。奥様も変りました。定めし母親も変りましたろう。妹や弟も変りましたろう。――私とてもその通り。

全く私も変りました。

道々私は自分で自分を考えて、今更のように心付いて見ると、御奉公に上りました頃の私と、その頃の私とは、自分ながら別な人のようになっておりましたのです。華美な御生活のなかに住み慣れて、知らず知らず奥様を見習うように成りましたのです。思えば私は自然と風俗をつくりました。ひっつめ鬢の昔も子供臭く、髱は出し、前髪は幅広にとり、鏡も暇々に眺め、剃刀も内証で触て、長湯をしても叱られず、思うさま磨き、爪の垢も奇麗に取って、すこしは見よげに成ました。