Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

「最敬礼、最敬礼」

と丘の上の式場で叫ぶ声は御部屋の内まで響きました。

遽に、表の格子の開く音がして、

「只今」

と御呼びなさるのは御客様の御声。

「今、帰りましたよ」

二度呼ばれて、御二人とも目を丸くして振返る途端――見れば後に旦那様が黙って立っていらっしゃるのです。奥様は男を突退ける隙も無いので、身を反して、蒼青に御成なさいました。歯医者は、もう仰天して了って、周章て左の手で奥様の腮を押えながら、右の手で虫歯を抜くという手付をなさいました。

誰も御出迎に参らないうちに、御客様はつかつかと上がっていらっしゃると見え、唐紙の開く音がして、廊下が軋む。稲妻のような恐怖は私の頭の脳天から足の爪先まで貫き通りました。

その時、吹き立てる喇叭や、打込む大太鼓の音が屋の外に轟渡りました。幾千人の群は一時に声を揚げて、

「天皇陛下万歳。天皇陛下万歳」

それは雷の鳴響くようでした。