Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
それを家内が取出した。家内は、雛(ひな)でも養うように、二人の子供を前に置いて、そのジャムを嘗(な)めさせるやら、菓子麺包(パン)につけて分けてくれるやらした。
私がどういう心の有様で居るか、何事(なんに)もそんなことは知らないから、お房は機嫌(きげん)よく私の傍へ来て、こんな歌を歌って聞かせた。
「兎、兎、そなたの耳は
どうしてそう長いぞ――
おらが母の、若い時の名物で、
笹の葉ッ子嚥(の)んだれば
それで、耳が長いぞ」
これは家内が幼少(おさな)い時分に、南部地方から来た下女とやらに習った節で、それを自分の娘に教えたのである。お房が得意の歌である。
私は力を得た。その晩、牧野君へ宛てた長い手紙を書いた。
幸にも、この手紙は私の心を友達へ伝えることが出来た。その返事の来た日から、牧野君は私の仕事に取っての擁護者であった。しかも、それを人に知らそうとしなかった。私は牧野君の深い心づかいを感じた。そして自分のベストを尽すということより外にこの友達の志に酬(むく)うべきものは無いと思った。
四月の始から一週間ばかりかけて、私は家を探しがてら一寸(ちょっと)上京した。