Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

渋谷、新宿――あの辺を探しあぐんで、ある日は途中で雨に降られた。角筈(つのはず)に住む水彩画家は、私と前後して信州へ入った人だが、一年ばかりで小諸を引揚げて来た。君は仏蘭西(フランス)へ再度の渡航を終えて、新たに画室を構えていた。そこへ私が訪ねて行って、それから大久保辺を尋ね歩いた。

郊外は開け始める頃であった。そこここの樹木の間には、新しい家屋が光って見えた。一軒、西大久保の植木屋の地内に、往来に沿うて新築中の平屋があったが、それが私の眼に着いた。まだ壁の下塗もしてない位で、大工が入って働いている最中。三人の子供を連れて来てここで仕事をするとしては、あまりに狭過ぎるとは思ったが、いかにも周囲(まわり)が気に入った。で、二度ほど足を運んで、結局工事の出来上るまで待つという約束で、そこを借りることに決めた。

この話を持って、小諸をさして帰って行く頃は、上州辺は最早(もう)梅に遅い位であった。山一つ越えると高原の上はまだ冬の光景(ありさま)で、それから傾斜を下るに従って、いくらかずつ温暖(あたたか)い方へ向っていた。小諸へ近づけば近づくほど、岩石の多い谷間(たにあい)には浅々と麦の緑を見出(みいだ)すことが出来た。