Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

私は本町の角にある茶店(ちゃてん)から、大きな茶箱を二つ求めて来て、書籍のたぐいはそれに詰めた。箪笥(たんす)でも、本箱でも、空虚(から)にして送らなければ壊(こわ)れて了うと言われた。この混雑の中で、幾度(いくたび)か町の人は私を引留めに来た。「夜逃げにでも逃げようかしらん」どうかすると私は家のものに向って、謔語(じょうだん)半分にこんなことを言うこともあった。あまりに長く世話に成り過ぎた、と私は思った。いざこの土地を見捨てて行くとなると、私達の生涯は深く根が生えたように成っていた。とはいえ町の人は私の願を容(い)れてくれた。そして餞別(せんべつ)を集めたり、いろいろ世話をしたりしてくれた。日頃親しくして、「叔父さん」とか「叔母さん」とか互に言い合った近所の人達は、かわるがわる訪ねて来た。いよいよ出発の日が近づいた。三人の子供には何を着せて行こう、とこう家内はいろいろに気を揉んだ。「房(ふう)ちゃん、いらッしゃい、衣服(おべべ)を着て見ましょう――温順(おとな)しくしないと、東京へ連れて行きませんよ」と家内が言って、写真を映した時に一度着せたヨソイキの着物を取出した。