Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
墓地は大久保の長光寺と言って鉄道の線路に近いところにあった。日が暮れてから、植木屋の亭主に手伝って貰って、私はこの大屋さんと二人で棺を提げて行った。同じ庭の内の借家に住む二人の「叔父さん」、それから向(むかい)の農家の人などは、提灯(ちょうちん)を持って見送ってくれた。この粗末な葬式を済ました後で、親戚や友達に知らせた。
こうして私の家には小さな新しい位牌(いはい)が一つ出来た。そのかわり、お繁の死は、私達の生活の重荷をいくらか軽くさせた形であった。まだお房も居るし、お菊も居る――二人もあれば、子供は沢山だ、と私は思った。
どうかすると私は串戯(じょうだん)半分に家のものに向って、
「お繁が死んでくれて、大(おおい)に難有(ありがた)かった」
こんなことを言うこともあった。私は唯自分の仕事を完成することにのみ心を砕いていた。
「子供なぞはどうでも可い」
多忙(いそが)しい時には、こんな気も起った。何を犠牲にしても、私は行けるところまで行って見ようと考えたのである。
郊外には、旧い大久保のまだ沢山残っている頃であった。仕事に疲れると、よく私は家を飛出して、そこいらへ気息(いき)を吐(つ)きに行った。