Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

急にお菊は勝手の違ったように、四辺(あたり)を眺め廻した。そして子供らしい恐怖に打たれて、なんでも家の方へ帰ろうと言出した。

「母さん――母さん」

お菊は、大久保の通りへ出るまでは、安心しなかった。

「菊(きい)ちゃん、お遊びなさいな」

こう往来に遊んでいた娘がお菊を見つけて呼んだ。お房の友達もその辺に多勢集っていた。

夕餐(ゆうはん)の煙は古い屋根や新しい板屋根から立ち登った。鍬を肩に掛けた農夫の群は、丁度一日の労働を終って、私達の側を通り過ぎた。それを眺めて、私は額に汗する人々の生活を思いやった。復た私は長い根気仕事を続ける気に成った。

熱いうちにも寂しい感じのする百日紅(さるすべり)の花が咲く頃と成った。やがて、亡くなった子供の新盆(あらぼん)、小諸の方ではまた祗園(ぎおん)の祭の来る時節である。冷(すず)しい草屋根の下に住んだ時とは違って、板屋根は日に近い。壁は乾くと同時に白く黴(かび)が来た。引越以来の混雑(とりこみ)にまぎれて、解物(ほどきもの)も、洗濯物も皆な後(おく)れて了ったと言って、家内は縁側の外へ張物板を持出したが、狭い廂(ひさ)の下に日蔭というものが無かった。